てぃおるの妄想録。

妄想・思考のはけ口。書きたいことをうんざりするほど書きたい。

茅ヶ崎に背を向けて

茅ヶ崎

読める人には読める漢字であり、読めない人にはどうやら難読漢字にも思われるらしい。

 

南湖。

読める人には読める漢字であり、読めない人にはどうやら難読漢字にも思われるらしい。

 

 

ちなみに、茅ヶ崎は「ちがさき」と読み、南湖は「なんご」と読む。

 

どちらも、地名で、茅ヶ崎は神奈川県の市名(横浜市にも町の名前として存在する。その場合は茅ヶ崎ではなく、茅ケ崎だが。)、南湖は茅ヶ崎市の町の名前である。南湖に至っては、変換すら出てこない。(ので、みなみみずうみといつも打っている。)

 

僕はここ、神奈川県茅ヶ崎市という小さな町で生まれ、18年間の人生をこの町とともに過ごしてきた。

 

この町には何もない。あるのは少しばかり淀んだ海と、東京に一本で行くことができるJR東海道線くらい。それ以外は神奈川県とはいえ、本当に何もない町だ。

 

けれど、そんな町が、僕は大好きだ。それらが、たまらなくいとおしい。

今住んでいる京都も、基本的に不便なことはないし、とても好きではある。が、僕が一番愛してやまない町は、インドの町でも京都でもカンボジアでもなく、きっと死ぬまでここ、茅ヶ崎である。(ここと言いながら、僕はこれを京都で書いている。)

 

どうしてこんなに好きなんだろう。

 

考えてみれば当たり前のことであり、きっと誰もが故郷を愛しているのかもしれないが、特に湘南の人間は地元や郷土に対する愛が強いように感じる。

 

 

思うに、僕の中でそれを強くさせているのは、ある男の存在であると思っている。

言うまでもなく、彼とは桑田佳祐である。

 

先ほどまで茅ヶ崎には何もないと言っていたが、サザンオールスターズを生み出した町でもある。 サザンオールスターズというか、桑田佳祐を生み出した町である。

 

 

思い返せば、僕の人生を振り返ったときに、記憶に刻まれている曲はいつも桑田佳祐の歌だった。

僕が物心ついて初めて曲名とメロディが一致して聴いた歌は、おそらく『波乗りジョニー』だった。

あのイントロが流れるたびに、曲の内容とは関係なく、心が踊る。小さな小さな少年の頃の経験が蘇る。夏の心に引き戻される。

 

勝手にシンドバッド』を聴けば、国道134号線の海岸沿いを思い出す。自分が海のある町に生まれたのだと再認識する。

 

TSUNAMI』を聴けば、小学校のころにやった合奏を思い出し、「津波のようなわびしさ」とはなんなのかについて、考えたことを思い出す。今もわかっていない。相変わらず意味不明な歌詞を書くものだ。

 

 『チャコの海岸物語』を聴けば、海に反射する光のゆらめきと、太陽に照らされる汚い砂浜を思い出す。漂着物やらポイ捨てしたゴミやらで、砂浜はいつも汚いのだ。変なクラゲも落ちている。

 

そんな中で、僕が心の底から好きな歌がある。

希望の轍』である。本当に好きというか、どれもこれも名曲ばかりなのだが、僕にとっては中でも象徴的な曲なのである。

 

というのも、『希望の轍』は2014年10月より茅ヶ崎駅JR東海道線の発着メロディーとして使用され、上り方面ではイントロ、下り方面ではサビが流れる。

僕は高校時代、電車で通学していたので、無意識にこれを毎日聴いていた。

それまでは別に毎日聴いていたわけではなかったが、思い返せば僕の高校時代はこの曲が象徴していたと思う。

 

もちろん、高校生だったころは、毎日ががむしゃらで、必死に生きてきた。毎日何かに悩み、何かに怯え、そして何かに希望を抱いていた。そんなことに余念を巡らすほど、暇ではなかった。

けれど慣れ親しんだこの町を離れ、遠く離れた町でこの曲を聴くと、涙が溢れて止まらないのだ。

何を隠そうこの歌には、茅ヶ崎を思わせるフレーズがいくつも出てくる。

「遠く遠く離れゆくエボシライン」。エボシとは、茅ヶ崎のトレードマークとも言える烏帽子岩のことを指す。(かたちが烏帽子に似ているからという、なんともお粗末なネーミング。戦後、米軍による砲撃演習の的として使用され、現在のかたちになったと言われている。)

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そしてエボシラインとは、この烏帽子岩を望む海岸線沿いの国道134号線の事であると思われる。(実際のところは砂防林が生い茂り、現在は海岸を望むことは難しくなってはいるが、桑田さんがこの詞を書いていたころは、もしかしたら本当に見えていたのかもしれない。)

 

そしてまた、僕にとってはこの離れゆくエボシラインは茅ヶ崎に背を向け、京都へと足を走らせる東海道線でもあるのだ。このエボシラインは、僕の青春時代を走り抜けた軌跡でもあり、"轍"なのだ。

僕の町は愛に溢れ、希望に溢れ、涙に溢れ、僕を優しく包み込む。僕の背中を茅ヶ崎は押してくれる。この歌を聴くたびに、生まれてよかった、この町でよかったと心から思せてくれる。

 

遠く遠く離れたこの町でも、僕は力強く生きている。波の音に支えられ、桑田佳祐の歌声に支えられ、希望の轍に支えられ、そして愛する仲間や家族に支えられ、僕は力強く生きている。

 

綺麗な海でも、魅力的な街並みでも、なんでもない。サーフィンをするわけでもない。けれど僕はこの町を一生愛するだろう。

 

だってこの町は、僕を温かく見守り、僕を育ててくれたから。

 

Let me run for today!

 

 

てぃおる

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